2019年秋冬コレクションは、クリエイティブ・ディレクターのルーク・マイヤーがこれまでで最もパーソナルにとらえている作品です。彼の人生における決定的な瞬間が、無数のリファレンスを介して表現されています。1990年代初頭のバンクーバーとシアトルの音楽から、ニューヨークのグッゲンハイム美術館でのマシュー・バーニーの展覧会にいたるまで、このコレクションは一見真逆のコンセプトを絡め合わせて、共通の糸を持つ作品群に仕上げています。それこそが、意図と視点の純粋さです。
シルエットは、ゆったりとし、エレガントで伸びやか。テーラリングウェアとテーラードアウターは、天然ウールと高性能合成繊維のブレンド布地で実現され、軽やかでレイリングが取り入れられています。トラウザーズはゆったりとしたフルレングスか、ワイドな場合はくるぶし丈に仕上げられています。コートやシャツの両サイドには、動きとボリューム感を演出するためのベンチレーショを伸ばしました。3本針刺繍や密なキルティングがユーティリタリアン調の要素を添えています。軽やかなシルクにはフォトプリントを施し、キルティング、レイヤリングで仕上げました。ニットウェアはボリュームと存在感があり、手刺繍やフォトプリントが施されています。しっかり起毛させたグラフィックインターシャや、ウールのヘリンボーンストライプ柄ジャカードで質感を高めました。
ラテックスのディテールと、パウダーグレー、グレージュ、クリニカルグリーンやブルー、ヌードで構成されたカラーパレットで、外科的な純粋さを表現しています。糸染めチェックは様々なスケールで展開され、ライクラ製のファーストレイヤー作品や、軽くてボリューム感のあるリバーシブル仕様のオーバーコートやテーラードジャケットなどが代表的なものとなり、レイヤリングルックを作り出しています。マシュー・バーニーの「クレマスター」シリーズの影響が見られる作品です。
フットウェアでこのコレクションをまとめました。OAMCがデザインし、Adidas Originalsが特別に開発・設計した、一番にご紹介するスニーカーのシルエットは、パシフィック・ノースウエストのクライミング文化や医療素材の純粋さをヒントにしています。これもAdidas Originalsが開発したタクティカルブーツは、柔らかいアッパーを覆うレースを巻き付けるタイプのクロージャーが特徴で、ノーザン・ブーツの原型となるデザインを想起させます。
ADIDAS X OAMC
撮影:ヨルゲン・テラー
FEATURING BLOOD ORANGE
コレクションの姿勢は、ダニエル・ジョンストンの卓越した作品に最もよく表れています。攻撃的なハンドスタイルと反体制的なメッセージに組み合わせられた、線と題材の純粋さと無邪気さ。アーティストのことばの真の意味を表す芸術家であるジョンストン氏。OAMCは彼の「Hi, How Are You」プロジェクトチャリティー団体と協力し、精神疾患について思いやりのあるメディアコンテンツ、プロジェクトやイベントを経済的に援助し、作成することで差別に対策できるよう貢献しています。