カラーパレットは洗練性とともにユーティリタリアン調の雰囲気を写しだし、暖かいブラウンやぺトロールメランジ調のハリスツイードウールを鮮やかなイエロー、フクシア、ミントグリーンとペールブルーをミックスしました。ブラックとホワイトのジャカードに仕立てた、厚手のダイアゴナルウールコーティングには、ディープグリーン、ネイビー、ミスティグレーを合わせてコントラストを作り出しています。しなやかでスマートなブラックレザーには、鮮やかなブルーとセラミックホワイトを合わせました。オーガンザは鮮やかなグリーン、イエロー、ブルー、レッドとともに、ナチュラルホワイトで取り入れ、ブラック、パープルとアクアのシアン調プリントモチーフの趣味の良さがひろがるベースとして機能します。
「素材の可能性から始める。」
—:ロバート・ラウシェンバーグ
コラージュとアッセンブラージュ。ラウシェンバーグ語録における「組み合わせ」。ラウシェンバーグは、伝説のブラック・マウンテン・カレッジの1年目にヨーゼフ・アルバースの指導を受けた経験から、素材を混ぜるという発想を得ました。この考え方は、デザインの根底にあることが多いものです。2つの異なる素材、色、技法の間の適正なバランスとバイブレーションを見つけることであり、2021年秋冬コレクションの最初の出発点でした。シャープな日本産ウールやコットンポプリン製オーバーシャツにオーガンジーのパネル、ウールのコートに付けたチャンキーニットの襟、テーラリング、シャツ、フットウェア、アクセサリーを通して重厚なメタルハードウェアの鋭利さが光っています。
しかし、この研究は、単なる素材の対立を超えて、私たちが今いる場所と時間を反映した、アイデアと感情の混合へと発展していったのです。トラックスーツや肌触りの良いインフレート素材、ゴムバンドやドローストリングで調整したレザージャケットやトラウザーズ、ゆったりとしたジャカードウールのオーバーシャツ、ダブルフェイス仕様のシェットランドニットやビスコース・ナイロンのフレアカラーニットなど、高級素材をよりリラックスしたフォルムで使用しています。自宅での長時間の作業や、移動中(可能であれば)の着用を両立できるウェアです。その根底にあるのは、たとえその場に留まらなければならなくなったとしても、よくできた美しいものを大切にしたいという気持ちです。
レイヤリングもまた重要性をもっています。シルエットを整えるだけでなく、プリントオーガンザやプリントグラフィックポプリンなどの層を重ねることで視覚的な深みを与えているのです。イラスト作品は、直近の過去が古代の歴史のように感じられることの探求を通じ、時間と場所の変化を反映しています。カセット、オープンリールレコーダー、VHSテープ、テレビのノイズ画面。遠い昔のことではないけれど、今となっては明らかに古いと感じられるような技術の数々。時間の概念と最近の歴史は、私たちと物事の関わり方に長い影を落としているものです。メディアの消費方法の変化、この20年間に起こった革命は、心の中に存在していながら、今や本当に「最近の古代」の歴史を作り上げました。
さらに、自然をモチーフにしたグラフィックは、ディストピア的というか、環境主義的ともいえるような観点で描かれています。渡り鳥、枯れゆく植物、そしてホッキョクグマ。私たちの美しい母なる大地には、まだまだ心配りや注意が必要なのです。
アクセサリーは、コラージュ的なアプローチと透明感の両方を反映しています。手袋はミックス素材でインダストリアルに仕上げ、バッグやクロスボディなどの小物類はしなやかに膨らみ、ハードなメタルディテールを添えました。ネックレスでは丈夫なリンクメタルチェーンにユーティリティコードを複雑に編み込んでいます。adidasとのコラボレーションを継続するOAMCは、バウンスアウトソールとシューズを包見込む透明スカルプチュアTPU製アッパーピースを特徴とし、上からハイパイルスエードとレザーパネリングの底が見えるデザイン「Type O-9」を発表しました。ユーティリティブーツは色にあふれ、カスタマイズされたカラリングが特徴のビブラムソールを備えています。
ブランド構築時から毎シーズン変わりなく、イタリアに開発事業拠点を構え、布地とアクセサリーに関しては、すべてイタリアと日本においてカスタマイズ開発を経て作り上げています。
ラウシェンバーグ氏の言葉にもあるように、「世界を一つの巨大な絵画と考えない理由はない」のです。
この気持ちは、私たちのポジティブなものの見方を反映しています。私たちは、この世界がどうあるべきかという新しいイメージを共有することができるかもしれません。