現在の思考回路は、目先の未来に固執していることは明らかです。私たちの行動とその結果。遠い未来の話でも、どこか遠い場所での空想話でもありません。今日の意識は、「今、ここ」に向かって正確にチューニングされているのです。ディーター・ラムスの作品と哲学は、2022年春夏コレクションの出発点として適切であったと考えられるのはこのような想いがあるから。余分なものは必要ないという想いです。肝心かなめに回帰するのは気分がいいもの。最終的に、質的にも美的にも、その目的に最も適したものを選び出すことにほかなりません。
ファインダーを介し、このコレクションは、素材と外観の両方の面から衣服という存在を高めることを意図しています。余計なデザインを一切排除し、スーペリア品質の布地、トリミングと技術で長く使える製品を作り出しました。
テーラリングには、丈夫なウール・グラニテ地、彫刻的な趣きのダブルフェイスコットン、ジャカードのコットン・ポリエステル製ハウンドトゥース布地を使用し、1つボタンでシャープな外観に仕上げられています。シルエットはたっぷりとしているか、解剖学にしたがってボディラインに合わせて成形したスポーツトラウザーズに対照的で、時には高性能の防水ジッパーを合わせました。
アウターウェアはポケットが複数付き、モジュール構造でボリューム感、ふくらみのあるデザイン。ミリタリー調の機能性を思わせています。ヴィスコースと三層構造のナイロンをボンディングしたダブルフェイスプリントで技巧を凝らし、ソフトな印象の宇宙をイメージしたプリントを施しました。フィルクーペとブロデリー・アングレーズで装飾されたとろみのあるシャツはゆったりとしたカットで仕立て、丈夫なリサイクルポリエステルドリル製トラウザーズやかっちりとしたコートに対比する柔らかなシルエットを生み出しています。
しかし、今シーズン最も重要なのは、OAMC Re:Workの導入です。私たちは、既存の衣服、布地、トリムにオーバーダイ・補強を施してプロポーションを再構築し、金具遣いや布パネルを合せて改造するというアイデアに、コレクションの一部をあてがいました。今シーズンは、ミリタリーウェアやブランケットを解体し、特にアメリカのM-65フィールドジャケットライナーを完全に作り変えて、いくつかのモデルを作り出す行為に重点を置いています。
さまざまな衣服を解体し、プロポーションを変え、布地やトリムを足したり引いたりし、オーバーダイや再仕上げを施すことで、これらのスタイルを今シーズンのシルエットに統合させました。デッドストックやヴィンテージ、廃棄された衣服に再び目を向け、その着こなしや使い方を再構築する旅を始められることを、私たちは誇りに思います。このアイディアを展開させることが重要であり、今シーズンは、このプロセスを深く探求していく始まりを示しています。
Re:Workウェア事業を実行することで、物体を新しい方法で調査するというコンセプトを実現していますが、私たちはそのアイデアを、潰れた缶のイメージでシンプルかつグラフィカルに表現しました。捨ててしまうものに、美しさや面白さを見いだすこと。再び使い道を見つけ、古いものを新しく感じる方法を見つけること。資源の働きを理解しようとするとき、アインシュタインのエネルギーの変換という概念が明確になります。
エネルギーは生成も破壊もされず、単に変換されるだけであるということが。私たちが使う資源は無限にあるわけではありません。常に存在し続けたものを私たちは扱っているのであり、その継続を保証するためには適切な敬意を維持する必要があります。
コレクションのカラーパレットは、ディーター・ラムスの作品にインスパイアされたものです。グリーンやピンクの注し色が入ったグレー、深い森のようなペトロールグリーン、鮮やかなイエローやレッド、深みのあるダークブルーやブラック、ナチュラルなタンレザーなど、どれも魅力を放ちます。しかし、高対比色を絶妙に塗ることこそが、そのインスピレーションを表しています。ラムズ氏の言葉にもあるように、『全体に色を広げるよりも、小さなタッチを添えるほうが、よりカラフルになる』のです。
アクセサリーやフットウェアは頑丈に作られています。縦長で丸みを帯びたダッフルバッグは、テクニカルな印象の金具遣いと構造が特徴です。パッド入りのスライドサンダルは、レザーでくるんだフットベッドに組み合わせました。頑丈なラグソールブーツは、サイドの防水ジッパーから足を入れ、ゴム引きのトゥ・ヒールキャップ、OAMCを象徴するアウトソールクリップを備えたレースレス仕上げで完成させています。