OAMC RE:WORK 2022年秋冬
FREDERIK NYSTRUP-LARSEN とDAN THAWLEYの対話
冬真っただ中のデンマーク西海岸、Fanø島から通話しているFrederik Nystrup-Larsen氏は、寒暖のショックに面するところです。デンマーク人のマルチメディアアーティストである彼は、数日後に太陽降り注ぐキューバに旅し、コペンハーゲンを中心として活動するBrigadeギャラリーが資金援助するなか、1月をハヴァナの新しい芸術家のレジデンシーで過ごします。そこで彼は新しい環境、その地域の素材が作り出す景観、そして彼自身の変化し続ける彫刻活動の可能性を探ります。
OAMCがChris Lensz氏に撮影を依頼したNystrup-Larsen氏が身に着けているのは、2022年秋冬OAMC Re:Workコレクション。彼のコペンハーゲンのスタジオ内外をめぐり、作品群にみられる形状の不協和音を紹介します。その中で際立つのが、金属やジャージーニット地で太極拳のポーズを重ね合わせた印象を形作った奇妙なランプ。スポーツや工業界に対しても、ハイブリッドなレディメイド作品が面白おかしく語りかけます。冬の太陽を浴びる雪景色を背景にしたパピエ・マシェ(張り子)の構造体は、初期のビデオゲーム文化の美学に対する意見を思わせます。Nystrup-Larsenのダイナミックな作品にみられる、抽象的でも、具象的でもあるフォルムをもとにした、ゆがんだ防人が現れているのです。一見ばらばらなこれらのオブジェは、この英国の王立美術院卒のこのアーティストの考えとワークプロセスの一部を示したものに他なりません。自らの周りの世界に常に疑問を投げかけ、消費文化、テクノロジー、美術史の伝統、そして芸術そのものの永続性に関する馬鹿らしさをからかっているのです。注目するべきは2019年のOFF LICENSE CASH ONLYプロジェクト。 Nystrup-Larsen氏は(Oliver Sundqvist氏とともに)鮮やかに色づけたパピエ・マシェのガラクタのポップアップストアを立ち上げ、その想像上コンテンツの市場価値で100点以上を売り上げました。
スタジオにある作品について教えてください。
今スタジオでは、サッカーボール作品やタイヤウェイトのような最新作は、どちらかというと自分の楽しみのために作ったものです。もちろん、全ての作品は、世界で私がどこにいるか、そしてある意味では自分の中でどうあるかということに由来しています。ここ数年は本当に変わったことがたくさん起こりました。たぶん、ふつうは健康のこととか、老いのこと、そしてこの数年が過ぎ去ったことなどを考え始めるのではないでしょうか。私はフィットネスのコンセプトに興味を持ち始めたところで、自分の体型をキープすること、彫刻的な観点から自分自身を形作ることなど、全ての側面にも心惹かれています。これらは私のフィットネスへのアプローチ方法に関する実験であり、たくさんの要素を思いついています。ナルシシストな感情かもしれないし、コロナ禍中に人々がジムを使用できなかったことに対する抗議なのかもしれません。はじめは、これらの作品をどこか公共の場所において、誰もが使えるようにしようと思いました。その後、全てを完璧に鋳造しようと思ったのです。それから、私の周りに既にある要素を使い、それらを組み合わせるというアイディアへと変わっていきました。オブジェについて、その純粋な重量が機能を持つことのように、シンプルに考えることにしたのです。現時点では、これらを使って、スタジオの中でトレーニングしているだけですね!
あなたの作品におけるエコロジーの役割とは?
OFF LICENSE CASH ONLYのようなプロジェクトでは、人々に対して、過消費という観点から、面白おかしいという点を除いて、著しくまずい行動をとっているというメッセージを伝えることができたのではないかと考えています。当時、コペンハーゲンからイーストロンドンへ物を運ぶ時、品質についてひどく抗議を受けました。ドアの重さとか、そのようなことまで、抗議されたのです。そこらじゅう、ガラクタだらけでした。ですから、原料となる素材は道端で調達することができました。また、私たちはスカンジナビアではAmazonを使ったことがなかったため、はじめてその影響を見ることができたのです。この機会が人々が実際に行っている消費活動の分析のようになっていきました。もちろん、最安値付近の作品が先に売れて、それからうなぎ上りになりましたから。
作品には文章をどのようにとりいれていますか?
それは、私がある特定のスタイルにこだわっていないこと、特定の媒体を持たないことに基づいていると思います。私の作品は、伝えたいと思っていることや、使いたいと思っている素材に左右されます。そして、それが絵画になったり、彫刻になったりする時があるのです。文章を書くことが、よりスピーディに彫刻を作る方法になることもあります。Soft Boxingシリーズのランプを作るには、金属を探し、溶接し、布地を調達しないといけませんが、ほんの4文でアイディアを表現することができるときもあるのです。そして、インスタレーションやショーに情報を追加できることもあります。私の作品のなかでもっともよくこれを表している例は、The Private Collection of Frederik Nystrup-Larsen だと思います。より正確に観覧者にメッセージを伝えられるよう、ストーリーを付けて展示されているからです。これらはすべて、私の人生や、生い立ち、つまり、子ども時代のエピソード、両親のなれそめなどの物語です。でも、ほとんどのものがフィクションです。自分が見られたいように枠組みを作ること、そしてそれをかなり正直に伝えることができることは、面白いと思います。結局のところ、私たちはいつもこれと同じことをしているのですから。ある一つのストーリーでは、起きたらベッドの中にオオカミがいた、と書きました。これは本当のことではありませんが、見る人が文章を自らの批判意識を向け、それと同時に作品も考察することができたらな、と思っています。
芸術家として、衣服、そしてファッションとの関係を教えてください。
ファッションを見ることも、ファッションの仕組み全てを見ることも好きですし、大きくインスピレーションを受けています。この関係はたくさんの形で芸術とデザインの間、建築とファッションの間にあり、ともに弾んでいます。これらにはヒエラルキーがあり、必ずしも公正だとは思っていませんが、存在することは事実です。
そして私は過消費が問題だと思っています。私はこの問題をとても重要に感じていて、一歩立ち戻ろうと努力しています。このプロジェクトが衣類を再利用するというものでなければ、参加していなかったと思います。このようなプロジェクトにおいては、美しさとデザインだけでなく、責任も負い、しっかりとサポートできなくてはなりません。そして、私自身の作品では、素材のことを常に考え、外に新しい素材をいつも買いに行くよりは周りにあるものを利用するよう努めています。私が新しい服を買うことはありません。もし誰かが何か欲しいか聞いても、たいていの場合は何もいらないと答えます。興味は大いに惹かれますので、見ることはよくします。でも、古着は買います。古いコムデギャルソンに目がありません。
OAMCを頭文字に使ってあなたらしい文を作ってください。
OBJECTS ATTENDING MASSIVE COMPETITION(大衆の、大規模な競争を待ち受けるオブジェ)。
その他のプロジェクト